学校評価 《令和6年度 学校評価》

令和6年度の保育目標と自己評価
~ 子どもひとり一人の育ちの過程を大切に ~

 昨年度(令和5年度)の自己評価及び学校関係者評価を参考に、今年の保育目標の検討を行い、保育の充実を図るとともに、併せて評価項目の検討を行って自己評価を実施した。 

Ⅰ 本年度の保育上の主な目標

  1. 子どもが自らやろうとするところに着目しながら、子どもの意欲を高める。
    昨年度の自己評価においては、現在の幼稚園教育要領の目指す基本的な保育の在り方(理念・方法)について、実践への評価が高かったものの、よりきめの細かい保育については目立った評価にはつながらなかった。
    長期における成育の見通しは変わらないが、毎年子どもの状態は変化している。
    教師も保育経験の積み重ねで、その時々で何を大切にすべきかをそれぞれの子どもに即して捉えており、短期計画において柔軟に対応し、子どもに無理のない状態、子ども自身が自らを生かせるよう配慮していくことを心がける。また、その効果を明らかにしていくことが大切である。
  2. 子ども相互の力が生かされ、集団活動の中で個性が伸びるよう、教師間で暗黙の連携を図る。
    教師はクラスを超えて子どもの様子をよく見、一貫して支援する。
    子どもが環境と関わりながら、自発的に活動を作り出し、相互の興味や活動の目標に応じて存分に活動できるよう、保育者の見守りと助言をし、四季折々に変化する園庭の自然環境が十分に生かされるよう整備することを基本とする。
  3. 子どもの個性と、安定して育つ人間関係を大切にする。(保護者の子ども理解を深める。)
    ぞれぞれの子どもごとに、育ちの過程や個性は異なることから、達成目標を一律にするのではなく、子ども自身の目標や興味、自己肯定感を大切にする。
    保護者や地域等との連携については、保育参観を少人数にして日常的な状態を自由に見て頂き、園での状態をよく理解していただく。
    園行事は保護者も共に参加し、共に育てていくことを強調する。どの子どもにとっても、皆で温かく見守り励まし、子ども同士、おとなと子どもの関係を深め、保護者同士の交流が円滑であることが、子どもの安定感にもつながり、子どもの豊かな育ちの礎になることを理解していただくように努める。
  4. 地域の公的機関や小学校との連携は、個々の問題として、卒園児や家庭内でのきょうだい関係を通してこれまで行われてきたが、年長組の活動では公共場所の活用を活発に行うよう取り入れる。

Ⅱ 本年度の園目標と配慮点

3歳児クラス

  1. 幼稚園生活に親しみを持ち、安心して生活する。
  2. 家庭との協力の下、基本的信頼感の確立を確かなものとする。 
  3. 保育者や友達と触れ合う中で人との関わり方を楽しむ。
  4. 生活習慣を身につけ、進んで身の回りのことを自分でするようになる。
  5. 園内の様々なものに興味関心を持ち、好きな遊びを見つけて園で友達と楽しく過ごす。

重点目標(保育上の配慮)

  • 本年度の入園児が少ないため、保育者と子どもの関係性が緊密になりやすいが、子どもが受け入れられながら、自分を自由に自己表現し、自立的に遊びに取り組めるよう保育者のかかわり方に配慮する。生活習慣の習得について、より良い習慣が身につくよう丁寧に関わり、無理なくよい仕方を身に着ける。
  • 保育者は子ども個人に応答すると共に、友達の遊びにも興味を持って一緒に遊べるよう、環境設定を広げたり、媒介する。
  • 空間の広さと多様な遊具を十分に活用して、ひとりひとりが自分の遊びのイメージを大切にして、じっくり遊びこめるようにする。

4歳児クラス

  1. 自分たちで遊具や自然物を用いて遊びのイメージを膨らませて楽しむ。
  2. 同年齢・異年齢児と交流し、自分を発揮しながら相手を受け入れて共に遊び楽しさを味わう。
  3. リズム運動など、一緒に動くことの楽しさを感じ進んで参加する。
  4. 園の生活習慣が身について、 保育者の働きかけで進んで行う。

重点目標(保育上の配慮)

  • ひとりひとりの発想や要求を受け止めて発展するよう援助する。
  • 室内活動が密集しないよう、室内活動の空間の空間を広くすることで自由な空間を生かし、自己コントロールして行動するのを助ける。
  • 5歳児との活動の中で、交流により遊びのイメージを広げ、他児との関わりに自信を持つようにする。
  • 園生活の時間進行や場所の活用に対応しながら、状況に合わせた行動がとれるようにする、無理のない時間配分をする。

5歳児クラス

  1. 自分が興味を持ったことなどに粘り強く取り組む。
  2. 友達と意見を出し合って目標やルールを作って活動する。
  3. 園外活動などを通して、体力をつけ、自然的社会的環境への関心を高める。 
  4. 環境設定や課題活動に文字や数を入れて自発的学習を促す。
  5. 外国語のネイティブ教師との触れ合いを通して英語と異文化の理解を深める。
  6. 多様な日本文化の一端(能楽、茶道、書道、日本舞踊など)を体験し理解を深め感性を磨く。

重点目標(保育上の配慮)

  • 身体活動が活発になる時期を大切にする。個人差があるので、それぞれが自分の目標をもって取り組むよう配慮する。
  • 園外保育の回数、時間、内容の量、質を高め、対外活動への自信を持つようにする。
  • 子どもの発想による遊びはできるだけ子ども同士に任せながら、物や人への対応の仕方を個別的にきちんと助言・援助をする。
  • 自分に自信をもって進んで他への配慮や協力ができるよう、ひとりひとりができることを皆で認めていく。

 Ⅲ 今年度の自己評価項目

本年度の自己評価項目について

  • 重点目標(配慮点)に対応するよう、以下の2側面について、評価の結果から今後の努力の方向性を明確にすることにした。
    1. 現在の子どもの状況に即した保育が行えたか
    2. 過去の経験を活かしつつ、これまでの子どもの姿に縛られずに現在の子どもから学びつつ対応し、保育の充実が図れたか
  • 評価基準は4段階評定とした。
    (4:当てはまる 3:大体当てはまる 2:少し当てはまる 1:当てはまらない )

1 保育方針、計画性

  1. 長期計画(活動計画、行事等)は、子どもの実態に対応した。 
  2. 短期の具体的計画は、子どもの個性や育ちの過程を尊重して柔軟にした。
  3. 活動の場の設定、環境構成、教材等の準備は、指導のねらいに応じて適切に行った。
  4. 園内の自然環境(園庭、屋上菜園等)を生かして、多様な遊びや発見、体験ができた。
  5. 環境構成、遊具・素材等の準備は、子どもの要求や活動経過をたどりながら行った。
  6. 異年齢の交流を大切に、子ども同士の繋がりを深めた。
  7. 保育の反省は個々に、また保育者間で随時積極的に行い、次に生かした。

2 保育方法、子どもへの対応

  1. 安全管理、清潔に気をつけ、子どもの発達状態に応じて適切に指導した。
  2. 基本的生活習慣や生活のルールが無理なく身に着くよう、各自の習得状態に合わせて指導した。 
  3. 子どもの行動は肯定的に受け止め、子どもの気づきを大切にした。
  4. 遊びやクラス活動では、子どもの発想や方法を理解して関わり、見守りながらよりよい方向へと援助した。
  5. 遊びや集団活動は、子ども同士の相互関係を深めながら援助した。
  6. それぞれの活動は、目標をもって集中し、最後までやり遂げることを大切に配慮した。
  7. 物の扱いや人へのかかわり方などの基本が身につくよう指導援助した。
  8. クラス活動は、子どもの経験、能力の違いを考慮し、力が発揮できるよう配慮した。
  9. 園行事等の全体活動は、どの子も楽しめるよう工夫し、集団活動への興味を育てた。

3 保育者としての資質

  1. 教師間の意見交換や他からの情報収集によって、専門知識や技能の向上に努めた。
  2. 園の職務を責任をもって果たした。 
  3. 子どもの育ち方の変化や社会的ニーズの現状を理解しながら保育の改善に向った。

4 保護者への対応

  1. 個々の子どもの様子を保護者に伝え、理解を得た。
  2. 保護者会や保育参観を通して、子育ての共通理解を図った。
  3. 保護者から園活動への協力を受けたり、保護者の意向を取り入れたりして、保育の充実を図った。
  4. 家庭での養育にも役立つよう、保護者とのコミュニケーションを大切にした。
  5. 保護者のクレームは謙虚に受け止め、園長、教職員で共有し保育の向上を図った。

5 地域との関わり、研修等

  1. 園内環境の補填として地域の自然環境、公共施設や人的資源を活用しながら保育の内容を深めた。
  2. 特に支援を必要とする子どもについての知識や保育の方法の向上のため、園内外での研修機会をもった。
  3. 子ども状態や園活動の必要に応じて、地域の保育関連機関、小学校等との連携を図った。

Ⅳ 本年度の自己評価結果と考察

1. 保育方針、計画性

 全7項目のうち、「1.長期計画」「2.ねらいの応じた環境設定」「7.反省を次に生かす」の3項目以外の4項目において、「3.5」以上の評価となった。
 子どもの実態への対応に力を注ぎ、特に「4.園の自然環境を生かす」「6.子ども同士の繋がりを深める」では全員での取り組みが見られた。
 保育において、計画に合わせることよりも即時的な柔軟な対応を重視しており、短期指導計画に重点を置いて齟齬なく実践できたと考えられる。これは小規模園の特徴として、その年特有の季節の変化や、自然的、社会的現象に応じた、教員間の柔軟緊密な連携が可能な状態での実践であったと評価したい。

2. 保育方法、子どもへの対応

 全9項目のうち、「2.基本的生活習慣や生活のルール定着」「3.子どもの行動は肯定的に受け止め、」「5.遊びや集団活動は子ども同士の相互関係を深めながら、」「7.物の扱いや人へのかかわり方などの基本が身につくよう、」の4項目はほぼ全員が「4」で、他の5項目も「3.5」以上の回答であった。
 保育方法について、子どもの発達状態によって変わるため、全員一致でないことは当然と考えられる。全体的に基礎的なことが身につくような援助指導が心掛けられているが、発展的な活動や意外性、面白さに向かう前に、幼児期として基礎的行動を大切にしていることはこれまでの自己評価から一貫しており、反省をしつつも、今の家庭での教育、社会的な多様な刺激状況等を考慮し、地味であっても将来に役立つ体験をより重視することが大切であるとの判断による実践であった。

3. 保育者としての資質 および 4. 保護者への対応

 「3.保育者としての資質」全3項目のうち「3.子どもの変化、社会的ニーズの理解」と、「4.保護者への対応」全5項目のうち「4.家庭に役立つコミュニケーション」の2項目は平均「3」以下となったが、以外は「3」を上回る結果となった。
 低評価となった2項目については、いずれも園外の状況、いわば「子育て支援」への関与に該当する。
 園内における生活の充実による子どもの育ちに全力を注ぐことが保護者支援につながるものと考えており、家庭における養育については保護者それぞれに任せている状況である。
 本年度は特に保護者からのクレームや要求は見られず、幼稚園・家庭の役割でのよい関係は形成されてきた。今後は評価項目を検討して、「教員が努力目標としていることに対する評価」を重点とするようにしたい。

5. 地域との関わり、研修等

 全3項目のうち、「1..園内環境の補填としての地域に施設の活用」は「3」の段階であるが、「2.特別な支援を要する子どもについての研修」および「3.地域の保育関連機関、小学校との連携」の2項目は、「2」の段階に留まり、今後の課題であることが明らかである。
 子どもの育ちが多様になり、本園としても可能な限り特性の異なる子どもを受け容れながら、それらの子どもたちが関わり合い、特性を生かしながら自己発揮ができる、育ち合う保育に向って、研修の機会を作ることが課題となっている。

6. 保護者の意見から

特に今年度の特徴とみられる保育者の意見の概略を述べる。

  1. 子どもの活動について
    • 屋上菜園の草むしり競争、収穫した果実の調理など実体験が、食への興味に広がった。鉄棒や縄跳びは自分の目標をもってカード作りなど達成感を味わう機会となった。(年長)
    • 子ども同士の遊びでは個性や発達段階を踏まえ,、必要に応じて保育者がかかわって相互理解を促したい(年中)
    • 基本的生活習慣、ルールは個々にその都度伝え、概ね獲得できた。(年少)
  2. 保護者、地域との関係、研修に関して
    • 教師からの発信が強いが、保護者同士の意見交換がもう少しできるとよい。地域の保護者に、園を見せる形から始めて、園の良さをアピールしたい。
    • 地域の方からの問い合わせが増えている、情報を発信していきたい。
    • 今年は保護者からのクレームは特になかった。
    • 社会的ニーズは近年著しく変化していることを感じる。
    • 研修参加は今後の課題として念頭に置きたい。
  3. 園活動全体について
    • 年間計画や子どもの具体的な行動、育ちの状態等、常に保育者間でコミュニケーションを取って保育してきた。
    • 園を取り巻く環境の変化に不安はあるが、園が温かなよい場となっている。

 以上の意見にも見られるように、令和6年度の保育実践において、園全体として現在の環境を十分に理解しながら、一体となって子どもの状態を中心した保育に傾注してきたと考える。
 在園児保護者からは支持を得ている。しかし、子どもの減少、保護者支援の必要性などの今日的は課題への積極的な取り組みが大きな課題となっている。次年度はいくつか具体的に取り組んでいきたい。