本年度の本園の保育目標と自己評価の取り組み
~ 小規模園としての豊かな保育を ~
昨年度(令和4年度)の自己評価及び学校関係者評価を参考に今年の保育目標の確認を行い、保育の充実を図るとともに併せて評価項目の検討を行って、自己評価を行った。
昨年度の自己評価の結果では、前年度の評価からの向上面は、子どもへの対応・保育方法及び保護者対応。あまり変わらない面(やや向上)は、教育理念の理解・共有、保育者としての資質、及び社会・自然環境との関連。低下した面は研究・研修、であった。園としては力を合わせて日々の保育に取り組み保育の成果はあったが、自己評価には教師各自の目標や基準も反映するが、こうした自己評価を重ねることで保育の質の向上を図っていきたい。
また、学校関係者の主な評価から以下の点を参考にした。①個性ある一人一人を大切に、人間性の基礎が養われる幼児期こそ質の高いものに触れることの重要性、また、情報機器に囲まれバーチャルな刺激の多い現代社会において、実体験を大事にする本園の目標は大切である。② 小規模園の良さを生かすこと、少子化社会において異年齢児との触れ合い・学び合いを尊重し社会性の育ちを支えること、一人一人の意見や状況を見逃すことなく共有し人間関係体験を深めること、を継続したい。③昨年度は令和3年度の自己評価より低い項目もあったが、保育に真剣に向き合い、自分にも厳しい評価をした結果とも読み取れる。子どもの育ち、活動の展開においては後退とは言えない。④保育者がゆとりをもって保育にあたること、また、保護者との連携や対外的な発信を一層努めてほしい。
そこで、単年度で向上への成果が実感され、保育者の意欲を高め保育効果を上げるためには、園の独自性に基づく具体的実践の目標の可視化や共有が大切と考え、保育目標及び評価項目の検討を行った。長期的な取り組みを必要とする側面は今後も継続することとした。
Ⅱ 本年度の園目標
本年度も一人一人の自主性、個性を大切に、きめ細かい対応をしながら、子どもからの発想を尊重して体力、行動力、判断力等の基礎的育ちを支える。そのために多様な環境や活動を整えながら子どもの経験を深める。
3歳児クラス
- 幼稚園生活に親しみを持ち、安心して生活する
- 家庭との協力の下、基本的信頼感の確立を確かなものとする
- 保育者や友達と触れ合う中で人との関わり方を楽しむ
- 生活習慣を身につけ、進んで身の回りのことを自分でするようになる
- 園内の様々なものに興味関心を持ち、好きな遊びを見つけて園で友達と楽しく過ごす
重点目標(保育上の配慮)
〇本年度の入園児には多様な発達状態の子どもがいることを考慮して、園生活に馴染みにくい子ども、生活習慣の遅れのある子どもに丁寧に寄り添うことにより、クラス全体が安定して遊べるようにする。〇一人一人が自分の遊びのイメージを大切にして、じっくり遊びこめるようにする。保育者は個人に応答すると共に、友達の遊びにも興味を持って一緒に遊べるように環境設定を広げたり、媒介をする。
4歳児クラス
- 自分たちで積極的に環境に働きかけ遊びを考え、工夫、発展させる
- 同年齢・異年齢児と交流し、自分を発揮し相手を受け入れながら共に遊ぶ楽しさを味わう
- リズム運動など集団活動の楽しさを感じ進んで参加する
- 園環境や遊具遊びを通して自分の興味関心を大切に、発見を楽しんだり遊びを作り出す
重点目標(保育上の配慮)
〇一人一人の発想や要求を受け止めて発展するよう援助する。〇室内活動が密集しないように、室内活動の空間の空間を広くすることを通して、自由な空間を生かし、自己コントロールして行動するのを助ける。〇5歳児との活動の中での交流により遊びのイメージを広げ、他児との関わりに自信を持つようにする。〇園生活の時間進行や場所の活用に対応しながら、状況に合わせた行動がとれるようにする、無理のない時間配分をする。
5歳児クラス
- 自分が興味を持ったことなどに粘り強く取り組む
- 友達と意見を出し合って目標やルールを作って活動する
- 園外活動などを通して、体力をつけ、自然的社会的環境への関心を高める
- 環境設定や課題活動に文字や数を入れて自発的学習を促す
- 外国語のネイティブ教師との触れ合いを通して英語と異文化の理解を深める
- 多様な日本文化の一端(能楽、茶道、書道、日本舞踊など)を体験し、理解を深め感性を磨く
重点目標(保育上の配慮)
〇身体機能の伸長を十分に図るよう、リズム運動の時間を多めにとって基礎力を強めるとともに、園外保育の回数、時間、内容の量、質を高めて、対外活動への自信を持つ。〇子どもの発想による遊びはできるだけ子ども同士に任せながら、物や人への対応の仕方を個別的に助言援助することによって、自己肯定感を持ち、他への配慮や協力をして対応し、物的環境を創造的に活用する。
Ⅲ 今年度の自己評価項目と評価結果
〇本年度の自己評価項目について
今年度の評価項目は以下の3側面を分けて、評価の結果から今後の努力の方向性を明確にすることにした。評価段階4段階評定(4:当てはまる、3:大体当てはまる、2:少し当てはまる、1:当てはまらない)
A 幼稚園教育要領等に即して幼稚園としての基本に対する実践評価
B 本園の目指す発展的な取り組みに対する実践評価
C 本園の実践環境の実状・課題への対応評価
1 保育理念、計画性
A-1. 園の教育理念や方針を常に精査し共有する
A-2. 計画は子どもの個性や育ちの過程を尊重して作成する
A-3. 行事の内容は子どもの状態に応じて生活が豊かになるように配慮する
B-4. 園内外の自然的社会的環境を生かす保育の工夫をする
B-5. 活動計画は子どもの興味関心を基本として環境構成、遊具・素材等を準備する
B-6. 異年齢の交流を大切に、見通しをもって活動をする
C-7. 日々の保育の反省を行い、次に生かす
〇評価結果について
全体的に 担任は ほぼ全員が当てはまるとしている。Aでは、計画作成、行事に関しては担任全員が当てはまるとし、理念の精査・共有に関しては個人差があった。Bは、子どもの興味に即した保育、異年齢交流に関して、ほぼ全員が当てはまるとして本園保育目標の実践は行われた。Cの反省の自己評価は、個人差が大きかった。保育後の話し合いなどを熱心におこない、教師相互の子ども理解が進んで保育は臨機応変に行われていた。最近の子どもの持つ課題(経験の偏り)への対応の難しさが明らかとなり、今後教師間の連携が重要と考えられた。
2 保育方法、子どもへの対応
A-1. 安全管理、清潔に気をつけ、年齢に応じて適切に対応をする
A-2. 基本的な生活習慣や生活のルールが無理なく身に着くように丁寧にかかわる
A- 3. 子どもの行動を肯定的に受け止め、個々の個性や育ちの経過を大切にする
B-4. 子どもが自立的、意欲的に行動できるよう環境構成や関わりを工夫配慮する
B-5. 遊びや集団活動で、子どもからの発想を尊重し、子ども同士の育ち合いを伸ばすようにする
C-6. クラス活動は子どもの経験の多様性、育ちのバランスを考慮して組み込む。
C-7. クラスや園全体の活動を楽しみながら社会性の育ちを促す
〇評価結果について
保育方法の評価は最も高く、教師が子どもと向き合うことを最も大切にして意欲を持っていることが捉えられた。特にAとCの各項目については全員が当てはまるとしており、子どもの基本な育ちのためのかかわりの配慮はできていた。より積極的な子どもの自立,創造に対する働きかけや教材については、まだ不足があり、今後さらに積極的・研究的に取り組むことによって、子どもの内に潜む個性的な力をさらに伸ばすよう、具体的な検討をしていかなければならない。
3 保育者としての資質
A-1. 幼稚園教諭としての専門知識や技能の向上に努める
B-2. 保育に関連のある 子どもの文化や自然、社会現象に関心を持って保育に生かす
C-3. 園の職務を責任をもって果たす
〇評価結果について
A、Bについては、全員が 当てはまるとしており、教師の専門性習得への個々の努力は認められた。Cにおいて、個人差が大きかったが、「責任をもって果たす」という結果を出すことにおいて、それぞれの事情により果たせなかったことへの謙虚な反省とみられる。園としては相互協力によって保育の遂行は十分になされ、そうした協力関係があった。
4 保護者への対応
A-1. 個々の子どもの様子を保護者に伝え理解を得る
A-2. 保護者会や保育参観を通して保育についての共通理解を図る
B-3. 保護者の園への協力や、保護者の意向の受け入れによって、保育の充実を図る
C4. 保護者からのクレームは謙虚に受け止め、園長、教職員で共有し保育の向上を図る
〇評価結果について
保護者対応はこれまでコロナ下においても個別的に丁寧に行ってきたが、今年度は保育参観の機会も増え、子ども達の自由な姿を見ていただくことができた。A、Bに関しては「ほぼあてはまる」状態であり、保護者による対応の違いへの手立てが今後の課題である。Cに関しては評価が高く、園として保護者の理解を得ながらの実践ができたと考える。
5地域との関わり、研修等
A-1. 地域の自然、公共施設や人的資源を活用しながら保育の内容を深める
B-2. 教員の保育や子どもに関する知識、技能の向上のための園内外における機会をもつ
C-3. 地域の保育関連機関、小学校等との連携を図る
〇評価結果について
これまで この側面の評価が全体的に最も低く、これまでも課題となっていた。今年度も「あまり当てはまらない」に近い評価があり、特にCが低い傾向であった。園として、自園の現在の保育の充実を最優先として、地域の関連機関との連携や外部研修の機会の有効活用には消極的な状態である。本園は従来から園との繋がりのある各専門家の保育参加を得ており、地域性については今後課題としていきたい。小学校との連携等は教師と保護者、保護者間の情報交換で子どもの適応は図られているが、地域に育つ子どもたちとしての視点も考えたい。
Ⅳ 今後に向けて
1 保育内容について。今年度の自己評価によって、現在の幼稚園教育要領の目指す基本的な保育の在り方(理念・方法)に対しては、実践への評価が高く、より進んだ実践ができたかについては個人差があった。日々の保育及び長期の計画において、子どもの状態をよく見てその内容を柔軟にしながら子どもに無理なく集団活動の中で個性が伸びるよう、教師同士で暗黙の連携が図られてきた結果と考える。園では、教師がクラスを超えて子どもの様子をよく見て・それとなく支援しながら、子どもが安心できる場として、四季折々に変化する園庭の環境を存分に生かして自己発揮してきた。こうしたきめの細かさを大切にしながら、子どもの状態は年々異なるので、今後は保育のねらいや先への見通しについて、教師の経験を生かして よりユニークな取り組みの導入に向っていきたい。
2 保護者、地域連携等について。 保護者との連携は、保育参観を少人数にして日常的な状態を自由に見て頂き、園での状態をよく理解していただくことができた。また、園行事への協力、保護者同士の交流も円滑で、そうした関係が子どもの安定感にもつながっていた。小規模園であることで保護者(間)と園関係者との全体的な関係性ができて、幼児が安心して育つ雰囲気~土壌を作ることができていると考える。これまで、地域の公的機関や小学校との連携は個々の問題として卒園児や家庭内でのきょうだい関係を通して行われてきたが、今後は園の地域における幼児施設として、より積極的に取り組む課題と考える。
Ⅴ 学校関係者評価
学校関係者評価は以下のように戴いた。
1 園目標について
就学前教育の基本を踏まえ、意識して子どもの育ちのペースを尊重し、自主自立、身体感覚、仲間関係の形成、心の安定を図る、及び異年齢児交流等、小規模の良さが充分生かされている。特に、多様な文化体験、「本物に触れる」ことは、本園の特色として大切にしていきたい。
2 自己評価項目について
幼稚園教育に共通的な項目で分かりやすく作られている。教師が自分の実践を客観化する機会を大切に、今後の課題を明確にしていって欲しい。
3 教師の自己評価について
子どもの個性、発達の違いを意識した評価がされている。やや評価が厳しいこともあり、小さな達成目標についての評価も考えたい。毎年の園の努力目標の再確認による指導計画の明文化は、子ども理解、教師の相互理解の共有として継続は重要である。具体的には、今後の改善点として、卒園児との交流、公共場所の活用、小学校の施設活用等、また、保育技術向上の外部研修など対外的な活動の可能性を探って欲しい。
4 総合評価と今後の課題
変化の大きい現状において例年通りの教育成果が得られているのは長年の積み重ねと教員間の連携の良さに基づくものであろう。未解決課題は今後の可能性としてとらえつつ、新たな活動や環境構成を具体的に考えていきたい。本園は子どもの個人情報保護が徹底されているが、それが 本園の実践の特徴の開示、周知の妨げになっていないか。しっかりした教育理念のもと、きめ細かい保育、家庭的な園環境は就学前の子どもに理想的であり、広く知ってもらえるよう改善を望みたい。
まとめ
本年度も修了児がそれぞれ元気に学校生活に入り、就学前の様々な経験が今後生かされていくことと期待している。今年度の教師の自己評価および学校関係者の意見を得て、幼稚園としての教育目標とそれに対する教師の実践は ほぼ適切におこなわれており、教師の思慮は深まっていることが見えて来た。これまでは一般的な評価項目を考えてきたが、今後はより詳細に、また より現代の子どものニーズに即した実践を踏まえた観点を考えていきたい。
毎年、教師一人一人が丁寧に実践を振り帰り、育って欲しい子どもの姿に対してどう対応してきたかを考え自己評価することは、園全体の教育の改善と保育者個々の専門性を高めることの両面において大切なことと考えられる。